またアンデルセンの作品に仰天した!
kakikenです。
今の時代って規制、規制で表現するのも息苦しい。
いつの間にか放送禁止用語、差別用語に指定されていたり。差別だ、差別だってうるさく言う輩ほど、差別意識が強い表れだと思うんだけど。
アンデルセンは童話なのにやたら惨殺表現使っている。
童話として単に優しく子供に寄り添う気はないようだ。
だからこそ名を遺す作家になったのだろうけど。
そんなアンデルセンで気になる作品がまたあった。
今回はホラーではないけど『これはどういう意図?』という大胆な結末だったので紹介する。
『火うち箱』という話。内容は以下の感じ。
ある兵士が戦地からボロボロになって町へ戻ろうとしている。その途中、魔法使いと出会う。魔法使いは兵士の苦労をねぎらいお金を与えようとする。お金は不思議な空間の中にあるのだが、魔法使いは財産を与えるかわりに、不思議な空間にある『火うち箱』を持ち帰ってくるように兵士に依頼。
兵士は言われた通りにお金を手に入れ『火打ち箱』を持ち帰る。
兵士はその箱が何なのかを魔法使いに尋ねる。しかし魔法使いは「お前には関係ない」とだんまり。それに腹を立てた兵士は魔法使いの首を切り落とし、お金と共に「火打ち箱」も手に入れる。
町へ戻る兵士は財産を浪費して堕落した生活を送る。そして財産が尽きて路頭に迷いそうになった時、あの『火うち箱』を思い出す。
その『火うち箱』はいわゆる魔法のランプで何でも願いをかなえてくれた。
兵士は『火うち箱』の力で再びお金持ちになる。さらには美しいと評判の王様の娘、お姫様に会ってみたいと考え『火うち箱』の力でそれも実現させる。
しかしそのことが王様に知られ、兵士は捕えられ死刑を宣告させる。
しかし兵士は『火うち箱』の力で王様を亡きものにする。
周囲は兵士の不思議な力に恐れをなし、兵士はついには王様になる。
という内容。
これ、どう思う?
私は魔法使いを斬首したところで『ああ、ラストは罰当たるな』と思って読んでいたが結末は何とも身勝手な兵隊の思うがまま、やりたい放題で終わる。
なぜこの結末?
こんな身勝手なサクセスストーリーでいいの?
何度と読み直した。
この兵士は手に入れたお金を貧乏人にまで大盤振る舞いしている。
国を牛耳る王様に対する末端の兵士の復讐劇ともいえるか?
さらに深く考えたが、この話は主人公の行いではなく、その主人公の行いに対する周囲の反応への皮肉がアンデルセンの一番描きたいことだったのかも。
人間の弱さというか。人間の醜さというか。
お金を持っている兵士には周囲はちやほやする。お金が無くなると相手もしない。
『火うち箱』の力で王様を倒すと、それまで死刑囚として見下していた周囲が『あなたが王様だ』と持ち上げる。
こういう人間の、周囲の反応をアンデルセンは実際経験して、それを作品に込めたのかもしれない。
当たり前のことだが、読者としては主人公を追いかけてしまうもの。そこに共感ができない結末にすることで真意を読者に考えさせているとしたら、深い話だけど。
でも童話の作品?
凡人の私の発想などでは測ることできないと思った。
そこで冒頭の話になるんだよね。
今は色々規制などがうるさく、そういう周囲を過剰に気にして、意識するあまり発想なども自由さを失って、つまらないものになっているなと表現者として自分の小ささを感じてしまったね。反省だ。